あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
 
 一度離れて私がハアッと息を吐いたのを見ると、顎をつかんで頬をもうひとつの手で包む。
 
 「口を開けて」
 
 そう言われて、素直に従う。

 いつの間にか彼に食べられてしまいそうな口づけに変わる。

 離れると、首筋に彼のキスが移動した。

 「今日はここまで」
 
 そう言うと、運転席に移動した。

 私はほてった顔をどちらに向けたらいいか分からず、下を向いた。
 
 「大丈夫?」
 
 「……宗吾さん、好き」
 
 「……は?」
 
 「……なんでもない」
 
 彼はハーっと息を吐いて顔を上に向けエンジンをかける。
 
 車は私のマンションへ向けて発進した。
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