あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
Ⅵ
日高さんにずっと夕飯を誘われていたが、ずうっと断り続けているとなんとなく直属上司なのに雰囲気が悪くなってきた。
意を決して、食事連れて行って下さいとお願いすると、嬉しそうに笑顔を向けられた。
なんだか、すごく意地悪をしていたような気がして、申し訳なくなった。
私の事情を知っていて、それを気遣い守ってくれていたことに、全く思い至る余裕がなかった。
その日もさすがモテる人だけある。
人気のあるイタリアンを予約しておいてくれて、連れて行ってくれた。
少しおしゃれしてきて良かった。
「やっと、一緒に食事できたな」
「ホントにすみませんでした。気を遣って頂いていたのに。私がお礼にお食事奢らないといけないくらいでしたね」
「まったくだな。この俺が、見つめるだけで満足していたんだから、それくらいして欲しいな」