あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
 
 隣のビルの上って、私の行きつけじゃないよね?
 最上階のバーがいつも行っているバーなのだ。
 
 確かこのビル、二軒くらいバーがあるけど。

 付いていくと、良かったー。
 二階下のバーだった。

 ところが、今日は貸し切りで入れないと言われてしまった。

 日高さんが困っていたら、お店の人が二階上にもバーがあると教えてしまった。
 信じられない。

 断る間もなく、上に歩いて行ってしまう。
 「ま、待って」
 
 日高さんが、扉を開ける。
 「いらっしゃいませ」

 聞いたことのある声が迎えてくれた。
 「お二人ですか?」
 「ああ」

 バーテン君の視線が痛い。
 でも、さすがです。
 私の顔色見て、すぐに知らないふりしてくれる。

 カップル席に通された。
 窓際のソファ。

< 45 / 63 >

この作品をシェア

pagetop