Filigran.



駅で別れる間際、


「私、明日から放課後に友達と勉強するから一緒に帰れないです。」


そうやって言えば、彼は「勉強?」と首を傾げる。


「中間試験の対策です。」と答えれば、


彼はしばし固まってから「雪乃の学校って進学校だった…」と頭を抱えだした。



何だか見たことのない反応をするから「確かに進学校ですけど」と言えば、



「俺芸能科だから殆ど勉強してない…」


「中学までは成績良かったけど間に合うかな」と何かを悩んでいる。



ほとんど毎日テレビで見かけるほど活躍してたんだから、


勉強する時間なくて当然だと思うし、何より勉強が全てでもないし…。



「えっと」と困惑していると彼はすぐに立ち直ったらしく、


「…ごめん、こっちの話」


とすぐに背筋を伸ばしていつものしゃんとした彼に戻った。



「雪乃、気を付けて帰ってね」と言ってくれる彼の今日の恰好を見て、


「…弓弦君も、不良に絡まれないように頑張ってください」とエールを送っておく。






別れてから少し振り向くと、


もう彼は不良モードに入ったのか殺気を放出しながら歩いていた。


あ、あれは逆に絡まれないかも。


そう思って変な安堵感を抱えて、


彼の演技力に感動しながら家路についた。

< 31 / 92 >

この作品をシェア

pagetop