Filigran.
「ということで勉強するよ、美花!」
「うん、美花ベンキョ嫌いだけど雪乃は好きだから頑張る!」
「そうだね、私も美花のこと好きだから頑張って教えるね!」
教科書はまだ開いていない癖に、
やたら重厚な箱に入っていたチョコのミルフィーユみたいなお菓子を、
口にモギュモギュ詰め込んでいる美花はリスみたいな顔になっている。
同じクラスの人たちはそんな私達を見て、
「おぉ試験前の恒例だ」と呟いている。
とりあえず美花の教科書を無理やりに開いて、
もう何度目になるか分からない勉強会をスタートさせた。
「ゆき~、江藤だけじゃなくて俺にも教えて」
勉強をはじめて1時間が経ったころ、
廊下に人影が、と思えばほっくんだった。
ほっくんはノートを片手に、うちのクラスの窓枠に体を預けてこちらを見ている。
「理系科目は教えられないよ」
ほっくんは理系で私たちは文系だから、そもそも違う科目だってあるんだ。
私がそう答えると、彼は「いいえ」と言ってニヤリと笑ったかと思うと、
「古典です」と自慢げにノートを見せつけてきた。
今度はポテトチップスにチョコレートがコーティングされたお菓子を夢中で食べている美花が、
「高藤って本好きなのに理系だし、古典が苦手科目って何なの」と文句を言っている。
そう言われたほっくんが「江藤はお菓子食ってるだけじゃん」と応戦する。
わぉ、私の子守りの対象が2人に増えちゃった。