愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
「やえ」
ふいに名前を呼ばれてドクンと心臓が音を立てた。
「いい名前だな」
「……ありがとうございます」
じんわりと胸の奥があたたかくなる。
自分の名前をそんな風に褒められたのは初めてだ。
ちょっぴり照れくさい。
「生まれたときに咲いていたということは、誕生日は今の時季?」
「あ、はい。ええっと、誕生日は……あ、昨日が誕生日でした」
そうだ。
私は昨日が誕生日だった。
もうずいぶんと誰にもお祝いして貰っていなくて、自分でも祝うことがない誕生日。
そんな存在をすっかりと忘れていた。
自分の名前の由来でもある八重桜が咲く大事な季節だというのに。
「もしかして忘れていた、とか?」
「はい、すっかりと」
「そうか、それなら――」
社長はこちらにすっと手を伸ばす。
その手には、先ほどの小枝付きの桜の花。
何事かとその手の行方を追えば私の顔の横を通り、髪にすっと差し込まれた。
「ささやかながら、誕生日おめでとう」
社長は目尻をほんの少しだけ下げて微笑んだ。
とたん、体の奥から熱いものが込み上げてくる。
そっと髪に触れて確かめる。
手のひらに収まるほどの桜の花。
今、私はどんな姿なんだろう。
ふいに名前を呼ばれてドクンと心臓が音を立てた。
「いい名前だな」
「……ありがとうございます」
じんわりと胸の奥があたたかくなる。
自分の名前をそんな風に褒められたのは初めてだ。
ちょっぴり照れくさい。
「生まれたときに咲いていたということは、誕生日は今の時季?」
「あ、はい。ええっと、誕生日は……あ、昨日が誕生日でした」
そうだ。
私は昨日が誕生日だった。
もうずいぶんと誰にもお祝いして貰っていなくて、自分でも祝うことがない誕生日。
そんな存在をすっかりと忘れていた。
自分の名前の由来でもある八重桜が咲く大事な季節だというのに。
「もしかして忘れていた、とか?」
「はい、すっかりと」
「そうか、それなら――」
社長はこちらにすっと手を伸ばす。
その手には、先ほどの小枝付きの桜の花。
何事かとその手の行方を追えば私の顔の横を通り、髪にすっと差し込まれた。
「ささやかながら、誕生日おめでとう」
社長は目尻をほんの少しだけ下げて微笑んだ。
とたん、体の奥から熱いものが込み上げてくる。
そっと髪に触れて確かめる。
手のひらに収まるほどの桜の花。
今、私はどんな姿なんだろう。