愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
「……セクハラだったかな?」

何も言わない私に、社長が少し困ったような戸惑う声音で尋ねる。
私は慌てて首を横に振った。

「いいえ。ありがとうございます。すごく嬉しくて感動してしまって……。もうずっと、誕生日なんてお祝いしてなくて……」

「そうなのか?」

「そうなんです。えっと、……これ似合いますか?」

鏡で見たいけれど生憎そんなものは持ち合わせていなくて、思わず社長に聞いてしまった。

「ああ、とてもよく似合っている。可愛らしい」

柔らかく微笑んだ社長はとても優しくて、胸がきゅんきゅんと悲鳴をあげた。

それだけじゃない。
数年ぶりに祝ってもらった誕生日。
本当に、何年ぶりだろうか。
嬉しくて嬉しくて、心も悲鳴をあげている。

熱く込み上げるものがあり、じわりと視界が揺らいだ。

「社長、本当にありがとうございます。こんな素敵な誕生日プレゼントがもらえるなんて思ってもみなくて……嬉しいです」

両親が亡くなってから、私の誕生日を祝うことなんてなかった。叔父さん叔母さんは当然私の誕生日に興味はないし、私一人ケーキを買うなんてこともできなかった。だから誕生日なんてあってないようなものと思っていたのに。
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