ぼくの話をしようと思う



それから、中園さんがゆっくり立ち上がって、アヤ子さんの手を取った。



なんか話してるみたいだったけど、ぼくのほうまで聞こえなかった。



それでいいんだけどね、でも、ちょっと聞きたかったな。






…いい話だろ?



いや、ぼくだって、まさかこんなにタイミングよく奥さんが来るなんて思わなかったよ。



でもいいじゃないか。



65年も待ったんだ。



タイミングなんて、どうだっていいんだ。






その間、ぼくはずっと黙ってふたりを見てた。



そしたら急に中園さんがキョロキョロして、ぼくを呼んだんだ。



ぼくは、ふたりの前に出て行った。



そして中園さんは、



『家内だよ』



って、照れながらアヤ子さんを紹介してくれた。



それから、ぼくのこともアヤ子さんに紹介してくれた。



出会ったばかりだけど、とても気のいい青年だって。



見た目20歳に「気のいい青年」なんて言われて、なんか変な感じだったよ。






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