ぼくの話をしようと思う



テレビや雑誌で、何度も写真を見たことがあった。



たしかにあの顔だ。



たしか、ぼくが死ぬ二ヶ月くらい前に、死刑が執行されたはずだった。



だからって…なんでこんなところにいるんだって思ってね。



あんなヤツに、未練を果たす時間なんて与えていいのかって。



だいたい、おかしいだろ。



ここは映画館だ。



アイツが自分で殺した繭がいる場所だ。



この期に及んで何の用だっていうんだよ。



もし彼女に用があるとかぬかすんなら、そんなの許しちゃいけない。






そう思って、ぼくは、後をつけた。



それで、しばらく歩いているうちに、いつかの広場に来た。



中園さんと出会った、あの広場だよ。



そこの隣に、ちょっとした森があるって話したの、覚えてる?



そいつ、そこに入っていったんだ。



そこで何をするつもりだったかなんて知らない。



とにかく今しかない。



そう思って、そいつに声をかけた。





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