あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
「さあ、大急ぎ」

 慎吾は用意されていた着付け用の客室に飛び込んだ。

 男の慎吾は簡単である。
 マスクをとって特殊メイクを剥がせば、すぐに礼装に着替えられる。

 が、里穂はエルフ耳を外しコンタクトを外し、髪を濡れタオルで拭いて銀髪から黒髪に戻り、花嫁用のドレスや飾りを身につける。

 最後に里穂がブーケをもち片腕を慎吾に委ねると、二人の準備が整った。

 各地にいるスタッフがインカムで互いに連携しあう。

「よし! 里穂、まずは庭園からパーティ会場を突っ切るぞ」

 フロックコートの礼装に着替えた慎吾が手袋を嵌め、ウエディングドレス姿の里穂の腰を抱く。
 彼が楽しそうに笑うから、里穂も笑顔を浮かべることができた。

 テラスへ続くガラス戸は既に開けはなたれている。
 慎吾は踏み出さず、傍の里穂を見つめた。
 どうしたの、と見返した彼女に。

「里穂、愛してる」

 真摯な言葉に、里穂も答えた。

「私も慎吾を愛してる」

 
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