君がたとえあいつの秘書でも離さない

 「わかったよ。君にはかなわないな」

 ポンポンと彼の頭を母親のように撫でてあげる。
 私の肩に顔を乗せて、じっとしている。

 とりあえず、ごまかせたみたい。
 普段なら、絶対無理。察知されそうだけど。
 
 今日はプロポーズしに来てくれたんだから、匠さんなりに色々考えていたんだろう。
 いつもと違う緊張感が彼を包んでいるのに気づいていた。
 
 私も本当はこんな気持ちでプロポーズを受けたくなかった。
 でも、お父様の話からなんとなくこうなるのは予測していた。

 そして、私の返事も前もって考え抜いた結果。
 どうしてこんなふうになってしまったの。

 妊娠したところで、それも知らせずにプロポーズを受ける。
 婚約はすると口約束。そして、距離を置く。
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