君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
「遙。君が気になって仕方ない。一目惚れだったのかも知れない。女性とこんなに趣味が合って、話していて時間を忘れるほど楽しかったことなんて今までなかったんだ。会いたくてしょうがないんだ。つまり……君と付き合いたいんだ」
 
 食事が一段落したとき、意を決したように私を真っ直ぐ見て話した。
 
 「私もこの間言ったとおり、匠さんが気になって仕方なかった。匠さんのことを聞くと皐月は知らないふりをしたの。直也さんと付き合っているのに……。何かあると直感した。まさか、堂本コーポレーションの御曹司だったとは思いも寄りませんでした。でも、私も匠さんを諦められない」
 
 そう言うと、彼は私の腕を引いて、胸の中に入れた。

 「好きだ。遙」
 
 「私も好きです。匠さん」
 
 ふたりでにっこりと笑い合い、おでこをつける。
 ゆっくり重なって、優しい口づけが落ちてきた。

 「ダメだ。これ以上やると止まらなくなる。今度は休日にデートしよう」
 
 嬉しい。
 
 「可愛い顔するなよ。どうしたらいいんだ」
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