君がたとえあいつの秘書でも離さない
そうだったんだ。
私、分かっていなかったのかも知れない。
じっと考え込む私を見て、匠さんは頭を撫でてくれた。
「大丈夫だ。何かあれば守るから。それと、直也達だが……」
「はい」
「あいつから事前連絡がなかった。皐月さんのことが今回の取引の引き金のようだ。まあ、あのくらいの額はどうということはないが、そのまま石井の傘下に入るようなことがあれば大変なことになる。皐月さんはそちらの取引企業のお嬢さんらしいな」
「調べたんですか?」
「悪いが、直也がこちらに話してこないことは調べるしかない。こちらも対処できないんでね。皐月さんの担当役員が直也の大学の後輩らしい。面倒なことになった」
どうしよう。
「遙には関係ない。気にしなくていいが、巻き込まれて何か困ることが起きたらすぐに言ってくるんだ。わかったね?」
「……はい」