君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 嬉しそうな顔を匠さんに向けている。
 匠さんも笑いながら話している。

 胸の中がチリチリする。
 キュウッと締め付けられるような。

 これは、嫉妬。その昔に感じたことのある感情。
 まだ、そういう関係ではない片思いの人に対して、感じたときもある。

 見ていられなくて、目を背けてしまう。
 ここにいることは伝えていなかった。

 彼は、受付でお客様と話しながら、またエレベーターへ。
 秘書と三人であがっていってしまった。

 今日はやめよう。そう思った。
 そして、カフェを出ようとした。
 
 その時、声をかけられた。

 「古川さん」
 振り向くと、ボスが立っている。
 
 どうして?
 今日は会食だったはずなのに。
 「今日の会食はすぐに終わったんだ。君も上がったし、僕も久しぶりにのんびり通りを歩いていたら、このカフェに君がいるのを見てね。君はずーっとあっちを見ているから気がつかなかったんじゃないか?」 
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