雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
「凛子との縁談をなかったものにして、その女と結婚でもするつもりか? そんなことが許されないことくらい、君が一番よく分かっているだろう。この話が、昨日今日出てきたものでもないことも理解しているはずだ。君のお父親が許すはずがない!」
興奮し切った宮川氏は、我を失ったように声を荒げた。
「すべて覚悟の上です。簡単でないことも分かっています。それでも、これだけは譲れません」
「君が、そんなにも愚かな男だったとは」
「どうしようもないほどに愚かな男です」
大切な女にすべてを抱え込ませ、一人で耐えさせて来た。そんなことにも気付かずに、ただあの優しさだけに甘えて。
自分の弱さが、臆病さが、雪野を傷付けて来た。
「お父様――」
黙って俺の横に立っていた凛子さんが口を開く。
「他の方を愛しているような人と結婚するなんて、私は嫌です。お父様は私に不幸になれとおっしゃるのですか?」
「凛子……」
怒りに狂っていた宮川氏が、表情を変えて凛子さんを見つめる。
「結婚するのはお父様じゃない。私です。この縁談、お断りします。創介さんのお父様に、お断りの連絡を入れてください」
苦渋に満ちた表情を浮かべた宮川氏が、俺を睨み付けた。
「貴様、このままで済むと思うな。うちをバカにして、凛子を傷付けて。これで終わりにはさせんからな。出て行け!」
「何度でもお詫びに参ります。申し訳ございませんでした」
もう一度深々と頭を下げた。
その時、俺の身体に何か紙のようなものが投げつけられる。足元に落ちたものが目に入る。それは宮川氏が手にしていた新聞だった。
「お父様っ、なんてことを」
「いいんです、凛子さん。では、失礼致します」
広い家から庭園を抜けて敷地の外に出る。その時、大きく息を吐いた。