雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
目の前に出された料理は、本当に美味しかった。
とにかく、この後のことに意識が向かないように料理を食べることに専念し、そして少しでも緊張が解けるようにとお酒に頼った。
お酒の威力は予想以上だった。
飲めば飲むほど美味しくて、身体がふわりと軽くなる。そして胸のあたりが温かくなって、緊張からくる身体の強張りが嘘のように緩んだ。
緊張してガチガチになるくらいなら、少し酔っぱらうくらいの方がいい――。
自然とお酒を口にする回数が増えてしまった。
「ここの旅館、とっても素敵なんですけど、一体いくらくらいするんですか……?」
本当にアルコールって凄い。さっきは言い淀んでしまったことをすらりと聞いてしまっている自分がいる。
「そんなこと聞いてどうする」
「だって、準備して来たお金で足りるかどうか、心配で……」
「まさか自分も出すつもりでいたのか?」
口に運んでいた箸を止め、創介さんが私をまじまじと見た。
「自分の分くらいは、出すのが普通でしょ?」
「……ったく、おまえは」
創介さんが息を大きく吐き、頬杖を付いた。
「おまえに払わせるつもりなんかねーよ。それに、おまえのバイト代くらいでどうにかなる額でもない。そんなことに払う金があったら、家にでも入れろ」
「でも! 新幹線代も出してもらいました。これ以上、してもらう理由は――」
「バカみたいに律義な雪野が考えそうなことだな。でもこれは、おまえへの卒業祝いだ。だったらいいだろ?」
卒業祝いって……。
瞬きするのも忘れて創介さんを見つめた。
「友達と卒業旅行する予定は?」
「ありません」
「そんなことだろうと思った。だから、これは、少し早いがおまえの卒業旅行だ」
どうして、今日はそんなに私を喜ばせることばかり言うの――?
不意に涙が零れそうになって慌てる。
「それに、おまえは学生で俺は働いている。学生に金なんか出させるか。俺にそんな格好の悪いことをさせるな。素直に言うことを聞いておけばいい」
「創介さん……」
涙腺も感情も緩んでしまいそうになる。
「ありがとうございます」
創介さんはほっとしたように表情を和らげた。