雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
「あんなに飲むからだ」
「本当に、ごめんなさい」
骨ばった指が優しく私の髪を梳く。そして、もう片方の手で私の腰を支えてくれている。
「どうせ、二人で風呂に入るのを緊張して、酒でも飲んでやり過ごしてたんだろ」
「それは……」
「もう、酔いはさめたのか?」
さっきよりは、だいぶ落ち着いているとは思う。でも、まだ思考はどこかゆらゆらとしていた。
「はい」
「そうか」
――酔っているからと言って配慮したりしない。
そう言っていたのに、怒っていないのだろうか。優しく見つめてくれるその目に少しほっとする。
「それにしても……。雪野は酔うと、あんな風になるんだな。いつもと全然違った」
「そう……かな」
その自覚はある。いつもはできないことをしようとしてしまった。
「たまには、酒を飲ませるか。そうしたら、あんなふうに素直に俺に甘えてくるだろ。雪野の本音も知ることが出来る気がする」
目の前にいる創介さんの目が熱を帯びる。
「……酒に酔って変わるのは、いつも、我慢してるからじゃないのか?」
「我慢なんて、何も――」
「こんなに遠い所まで来たんだ。いつもなら言えないこと、言ったっていい」
声が掠れて、低くなった。創介さんの声も目も、何もかもが私の胸の奥を刺激する。
いつもなら言えないこと。
真っ先に思いつくのは――。
創介さんが、好き。
どうしようもなく好きだということ。
でも、どんなに酔ったってその言葉だけは言えない。言えない分だけ、想いは身体の奥で燻くすぶるから、私の体温はただ上昇していく。
何かを言えるわけもなくて、その代わり創介さんの肩に額を押さえつけた。
「雪野……?」
「私、今、すごく恥ずかしい顔してます」
触れたくて触れたくてたまらない。
きっと、そんな物欲しげな顔をしているに決まってる。
「いいよ、どんな顔だって。おまえの顔が見たい」
こんな顔見られたら、
何もかも見透かされる――。
「何も言えないなら、顔だけでも見せろ――」
おそるおそる顔を上げる。
間近に迫る創介さんの目は、何かに追い立てられているような余裕のないもので。そんな目を見るだけで、私はただの女になる。
「創介、さん」
好き――。
「雪野……」
呻くように私の名前を呼ぶと、私の唇を激しく奪った。