雪降る夜はあなたに会いたい 【上】


 エンジンの切れた車内は、時間とともに気温が下がって行く。
 狂おしいほどに荒ぶるキスで、何度も歯がかち合う。その熱が涙腺までも刺激する。気付けば、シートに身体を押さえつけられていた。

「――んっ」
「……ごめん。ごめんな、雪野」

息が苦しくなっては離れる唇の隙間から、喉の奥から絞り出されるような創介さんの声が零れ落ちて行く。

「ごめんっ――」

零れて行く哀しい言葉を堰き止めるようにとまた唇が重なるのに、その哀しみは外へと出て行こうとする。

謝ったりしないで――。

「……おまえには、もっといい男が似合う。俺みたいな男じゃなく――」

大きくてごつごつとした二つの手のひらが私の顔を包んで唇を離す。
目を開くと、鋭い切れ長の目が透明の膜に覆われていた。哀しみに満ちた目が私を見つめる。

そんな目で見ないで――。

ゆらゆらと揺れる黒い目は苦しそうに閉じられて、私の目尻の雫を唇で掬った。

「もっと、おまえのことを、大切にできる男が――」

優しく触れながら、そんなこと言わないで――。

涙に濡れた唇が、私の唇に再び重なる。
しょっぱい味が入り込んで、胸の奥まで流れて行く。
すべてを振り払いたくて、必死で唇を絡める。
離れないように重ねて絡めて。怖くなって、創介さんの身体に、唇にしがみつくように自分をぶつけた。

今の自分の顔を見られたくない。
そんなことを言う創介さんの顔を見たくない。

「そう思うのに、俺は……」

雪がフロントガラスに積み重なって、音さえも届かなくさせる。車内を満たす濃密な空気が、重くのしかかった。


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