雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
「全部分かってるって言ったよね。創介さんとの未来がないことも、創介さんが私を好きなわけじゃないことも」
創介さんには、重くのしかかるしがらみを忘れられる場所が必要だった。それが、"何も知らない"私だった。
私が創介さんのこと知らないから、他の女の人たちと違って傍に置いてくれていたのだ。
でも、それは愛情ではない。
「だから、今更憎しみなんて湧かないよ」
いつか創介さんが私との関係を終わりにしなければならない時が来たら、すべては終わる――。
三年前から自分に言い聞かせてきている。
「……そう。まあ、どちらにしても、君の想いはすぐ断ち切らないとね。君は覚悟が出来ているらしいから、大丈夫か。いつでも終わる覚悟はできているんだろう?」
酷く冷たい目で、榊君が私を見た。
「あの人、今、縁談話が進んでるよ? まあ、相手自体はずっと前から決まっていた人だけどね」
今――。
その二文字が、恐ろしいほどに私の胸を貫いて行った。不覚にも激しく動揺する。
「君の覚悟の通りの結末がすぐ来るんだ。だったら、僕と二人でいたって同じだろ? 僕のものになってくれれば、君を必ず大切にすると約束しようしよう」
どうしてこんなに頭が真っ白になるのか。
分かっていたことだと、たった今榊君にも言ったではないか。
こうして現実として突きつけられて、これまでしてきた覚悟がどれだけ意味ないものだったか思い知らされるなんて。
『覚悟はできてる、全部分かってる』
そんな風に納得できていると思えたのは、未来だったからか。
もう、あの人に会えなくなる――。
いざその時が来て、脆く崩れ落ちそうになる自分が許せない。
精一杯の強がりで榊君に告げた。
「榊君の言う通り。いつか終わると分かっていたことだから、一人になった後も何の感情も残らない。榊君の力になってあげられなくてごめん」
復讐するために好きでもない人と付き合おうなんて、その後に残るのはきっと虚しさだけだ。
そんなことで榊君が救われるはずがない。
「どうか、自分自身を傷付けることだけはしないで。自分を大切にしてほしい」
席を立ち榊君に背を向けた。