雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
泣くのは間違っている――。
分かりきっていたことなのに、どうして涙は止まってくれないのだろう。
静まり返った自分の部屋で声を殺す。
――今、縁談話が進んでいる。
三年だ。
三年も続けられたことの方が奇跡なのだ。
覚悟していたことが起きているだけなのに、受け止める私の気持ちが変わってしまっていた。
三年という月日が、気持ちをこんなにも大きく深いものにしてしまった。
どれだけ覚悟して、想いが大きくならないようにと自分を律して来たつもりでも、勝手にそれは膨らんで、今では身体を引き裂かれそうなほどにどこもかしこも痛い。
ベッドに背中を預けて、天井を見上げる。
こんなに好きになっちゃって、どうするの――。
見上げた拍子に、また涙が零れ落ちた。
力任せに頬を拭う。頬に触れた自分の手を見つめた。
『……雪野』
創介さんが私を見る時、いつも、長い人差し指で頬に触れてくれた。
あの仕草が、言葉以上に嬉しかった。
なんでそんなことを今思い出してしまうのか。
三年間で、積み重なった創介さんとの時間。その全部が私を苦しめる。
思い出すのは辛いことではなく幸せだったことばかりで、その記憶が翻って矢になって向かって来る。
どうすれば、強くいられる?
ベッド脇に置いてある象を見つめる。
涙で滲んでも、やっぱり象の顔はどこかとぼけていた。
笑おうと思っても、すぐに歪んで上手く笑えない。
ちゃんと、上手くできるか分からない――。
小さな象を手の中に包む。
どうしたらいい……?
答えなんて決まっているのに、創介さんに縋ってしまいそうになる。創介さんに、会いたくてたまらなくなる。
縁談話が進んでいるのなら、もうそんなに時間は残っていないだろう。
終わりを告げられるのは時間の問題だ。それなのに、こんなに取り乱していてはダメなのだ。
こんな自分ではダメだ。木村さんにあんなにもはっきりと告げたというのに、全然考えていたように心を制御できない。
怖いです。怖くて、仕方ない――。
そんな私の苦悩や弱さなんて何の関係もないというように、その現実はすぐにやって来た。