アンコール マリアージュ
電話に応対しながら、真菜は久保のパソコンに釘付けになる。

ちょうど、テレビでサプライズウェディングの様子が放送されているところだった。

(これの影響?それにしても、まだ放送の途中なのに?)

画面では、挙式を終えた新郎新婦が、びっくりしたーと話している。

つまりこの後まだ、写真撮影やパーティーの様子も流れるはずだ。

(いつまで鳴り響くのー?この電話)

結局、この日は1日中電話が鳴りっぱなし。

挙式の仮予約は、あっという間に翌年の9月までの土日が埋まってしまった。

「はあー、もう、なんなの?この怒涛の展開は…」

夜になり、ようやく落ち着いたオフィスで、久保はデスクにバタッと突っ伏す。

「ほんとですよー。テレビの影響って恐ろしいですね」
「しかも、サプライズウェディングのご希望の電話も多くて」
「そう!あと、仮予約はまだだけど、打ち合わせのご希望も凄いですよ」
「うわー、予約表が真っ黒!どうするんですか?店長。これ、さばけますか?」

久保は、ぐったりしたまま、無ー理ーと呟いた。

するとまた電話が鳴り始め、皆はビクッとする。

1番近くにいた梓が受話器を上げた。

「お電話ありがとう…あ、お疲れ様です。はい。今、店長に代わりますね」

そう言ってから、久保に声をかける。

「店長、エリア統括マネージャーからです。大丈夫かー?ですって」

久保は、ガバッと顔を上げると、梓から受話器を奪い、声を荒げた。

「マネージャー!ぜんっぜん大丈夫じゃないんですけど!どうしてくれるんですか?!うち、パンクしちゃいますよ!」

まあまあ、と言うマネージャーの声が、電話から漏れ聞こえる。

「明日から、他店のスタッフもヘルプに行かせるから。なんとかしばらく頑張ってね。じゃあね!」

そして電話はプツリと切れた。
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