乙女戦隊 月影 〜恥じらいの戦士〜
「み、みんな!」

九鬼の嬉しそうな顔に、あたしは微笑んだ。

「1人で、格好つけないでよ!」

「あたし達もいますから!」

いつのまにか、戦う覚悟を決めた夏希は、ガッツポーズをつくった。

「ありがとう」

感動からか…少し泣きそうになる九鬼に、あたしはえらそうに何度も頷いた。


九鬼はすぐに、少し滲んだ涙を拭うと、前を睨んだ。

「怪人が来るわ!だけど、そいつは、今までの怪人と違う!だけど、今…あたしは、変身できない!」

苦々しそうに、猛スピードで近づいて来る砂埃を口惜しそうに、睨む九鬼の肩を、あたしが叩いた。

「みんなのムーンエナジーを集めれば…大丈夫よ」

あたしは自分の眼鏡ケースを、九鬼に差し出した。

夏希もそれに従う。


「あなた方は…」

感動する九鬼の様子に、あたしはじ〜んと来るものがあったけど、内心はにやっと笑っていた。

(あんまり…戦いたくないのよね。あたし…いつも、パンツを世間に晒しているし)

今日は、見せパンをはいているとはいえ、

あたしは乙女だ。

何度も見せる気はない。

「みんなのムーンエナジー…使わせて貰うわ」

基本的に、人を疑うことのしない九鬼は、素直にあたし達の好意を受け取った。

そして、あたし達の眼鏡から、ムーンエナジーをチャージしょうとしたが、


「…」

チャージできなかった。

固まる九鬼。

それを見て、気まずくなったあたしは、夏希に逆ギレした。

「あんた!ちゃんと、夜中!月が見えるところに、眼鏡ケースを置いておいたの!」

自分のことを棚にあげて、怒るあたしに、夏希もキレた。

「あたし!そんな設定知らないし!」

そりゃあ〜そうだ。教えてない。

少し怯んでしまったあたしに、夏希は言った。

「あんただって、充電してないじゃん!あたしと違って、知ってたのに!」

それを言われると、あたしは一瞬、呼吸が止まった。

(そりゃあ〜そうだ)

あたしは、心の中では納得した。



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