神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
俺は、そうは思わない。

死体にだって、死体の権利がある。

死人にだって口はある。忘却されることを望んでいない。

死人に口がないなんて、全ては、生きている者が都合良く解釈した結果に過ぎない。

死んでしまえば、それで終わりだから。それ以上は何も続かないから。

だから、何もかも綺麗に解釈して、美談として終わらせたがる。

でも、それは生者の都合に過ぎない。

死んだ本人が、何を望んでいるか。

誰もそんなことは考えない。

死人の気持ちを、誰も考えようとしない。

どうして?

どうして?

どうしてなのか。

その答えは一つ。




「皆、『君達』には黙っていてもらわないと、都合が悪いんだよ」

可哀想にね。勝手に口を封じられて。

…可哀想だから。



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