再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
「のどかちゃんはさ、趣味は何?」

突然話しかけられたのでビクッと驚いてしまった。

「え?」

答えに詰まると彼は気にしないかのように自分の話を始めた。

「俺はウインドサーフィンに最近ハマってるんだ。知ってる? 風を受けて波に乗るんだけど気持ちいいんだ」

「そうなんですね。いいですね。気持ちよさそう」

とってつけたような褒めの言葉しか浮かばない。けれど少し酔い気味の彼は気にしないようでひとり話し続ける。

「海も行くし、湖でもやったりするんだ。緊張が続く仕事だろ? うまく気分転換しないと滅入ってしまう時もあるんだ」

「そうですよね。すごくわかります。助ける仕事だけど助けられないこともあります。そんな時気持ちを切り替えられず引きずってしまったりしてしまうんです」

「俺たちも割り切れないことはたくさんある。やりきれないって気持ちも。でも医療従事者としてはみんなあるのかもな」

私は大きく頷いた。
救命病棟って命に直結している職場で常に緊張の中で仕事をしている。
看取ることもたくさんある。
仕事だからいつまでも引きずっていてはいけないと思うけど、それだけでは整理がつかない気持ちもある。他にも待っている患者さんがいるとわかっていても私だって人間だから、はい次、とならない。

「海はさ、見てるだけでも気持ちが穏やかになるんだ。波を見てるだけで頭が空っぽになってくれる。そんな時に風を受けて波に乗ると自然と一体になったような気持ちになれるんだ。湖だって周りの森に囲まれ癒される。俺たちの仕事は俺たち自身の気持ちにゆとりがないとダメなんだ。そうじゃないと人に優しくできないだろ?」

真面目に話していたが、最後はちゃめっ気のある言葉で彼の気持ちが私の中にスッと入り込んできた。
今まで漠然と感じていたものが確かなものになった瞬間だった。
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