再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
「のどかちゃん、待ってたよ」

「すみません、運動オンチで」

やっと追いついた私にホッとした表情をむけてくれるけれど、なぜかインストラクターの彼にむける表情はぎこちなく違和感を感じる。

「お姉さん、みんなに追いついてよかったですね。さっきみたいに慌てると危ないですよ。気をつけて」

「ありがとう。気をつけるね」

彼は笑いながら私のそばを離れていき、女性のインストラクターの元へ漕ぎ出した。

彼の後ろ姿を見つめていると、夏目さんの声が聞こえた気がして振り向いたが、笑うだけで何も言ってこなかった。
インストラクターの彼のおかげで力の抜き方やバランスの取り方のコツのようなものがなんとなく分かり、みんなと楽しむことができた。
夏目さんは常に気をかけてくれ、私のそばを離れず声をかけてくれる。なんだか付き合っていると勘違いをしてしまいそうなほどに優しい。私は彼の仕草ひとつに胸のドキドキがおさまらない。優しすぎて彼からもう離れられなくなりそうで怖い。

陸に上がると地面の固さに足元がふらついてしまった。

「おっと……」

たまたま通りがかったインストラクターの彼が私の腰をサッと抱えてくれた。

「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとうございます」

お礼を言うと体勢を整えた。

「陸に上がるとバランス崩しがちですよね。お姉さんはボードに乗る時も陸に上がる時もですね」

和やかに笑う彼に私もつられて笑ってしまう。

「ほんと。どちらのバランスもうまく取れないわ」

そんな軽口をしていると夏目さんにさっと腰を抱かれ、「そろそろ行こうか」と促される。
彼の仕草にドキッとしてしまうが、ひとまずインストラクターの彼には頭を下げ、お礼を言いその場を後にする。
ロッカーへ戻ると着替えをし、外に出ると夏目さんはすでに待っていてくれた。

「毎回お待たせしてばかりでごめんなさい」

「いや、待ってない。それよりお昼に行こうか」

頷くとさっとまた腰を抱くように密着してきた。行きはこんなことなかったのに、と驚いてしまい動揺してしまう。
彼の手が触れるか触れないかの距離だが、周りから見たら抱きしめられてるように見えるような距離感だ。
一緒にレッスンを受けていた人やインストラクターのふたりも見ており、どうみても私たちが付き合っているように見えてしまいそう。

「ありがとうございました。またお待ちしております」

声をかけられた私たちは、頭を下げてそのままの体勢で駐車場へ戻った。
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