再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
車の中へ戻るが、動揺してしまい何を話したらいいのか出てこない。

「お腹すいたな」

「そ、そうですね」

「前に話していたほうとうでいいか?」

「は、はい」

夏目さんは何もなかったように普通に話してきた。彼にとっては特に意味のなかった行動だったのかもしれない、とこっそり深呼吸をすると私も何もなかったように振る舞う努力をした。

「久しぶりなので楽しみです。でも夏目さんはこの後ウィンドサーフィンするから食べすぎると体重オーバーなんじゃないですか?」

うふふ、と笑って言うと彼も笑って「そしたら助けてくれ」と返してきた。
夏目さんの行きつけというお店で美味しいほうとうを食べるとまた湖畔に戻ってきた。
先ほどとは違うショップで、スタッフのみんなからは気さくに声をかけられている。
私がいるのを見て彼女か? と冷やかされていたが、友達だよと返答していた。

うん……やっぱり友達だよね。
彼は異性にも距離が近いタイプなのかもしれない、と先ほどの行動もなんでもないのだとまた気持ちを落ち着けた。でもどこか悲しく感じる自分がいた。
今日ふたりでここに来たのはみんなよりも距離が縮まったのだと勝手に浮かれていたから。

「佐伯です。夏目さんにはお世話になってます。今日は見学させてください」

「槙野です。佐伯さんはやらないの?」

「私にはハードルが高いので……」

あはは、と苦笑いを浮かべる私に槙野さんは、優しく教えてあげるのにと愛想よく言ってくれる。

「ありがとうございます。でも先ほどSAPをやったので今日はもう無理そうです。機会があれば是非お願いします」

そんな会話をしていると夏目さんは支度を終えて出てきた。

「のどかちゃんはショップの中でゆっくりしてて。カフェも併設されてるし、意外と美味しいんだ」

「意外とは余計! 美味しいんだから」

「ありがとうございます。じゃ、お言葉に甘えてゆっくりさせてもらいます。夏目さんは気にせずゆっくりやってきてくださいね」

「ありがとう」

彼はそう言うと槙野さんと出て行ってしまった。
私は隣に併設されているカフェへ移動した。
お店の中から窓ガラス越しに湖畔が一望できる。ウッディな建物で北欧の雑貨が置かれていてとても可愛らしい。
私は窓際の席を選ぼうとしたが、天気もいいし、まだ暖かいのでウッドデッキの席を選んだ。
温かいカフェオレを手にぼうっと見ていると夏目さんと原野さんはすでに湖の中央にいた。すでにセイルを立て、並走するように進んでいる。時折風を受けるためが裏表が変わったりしているが何をしているのかわからない。ただ風に押されるように進む彼らの姿はとても気持ちよさそうに見えた。
少し風が吹くとその風を掴まえるようにセイラの向きを変える。彼らの動きは機敏で、湖面が波打つような風がたまに来ると、それに乗り上げるように軽くジャンプしていた。
私は夏目さんに釘付けになってしまった。
< 32 / 65 >

この作品をシェア

pagetop