もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
「あの、ご飯の用意ができてます!」
彼女の身体は解放しないままに靴を脱ぎ、ようやく玄関から上がったところで彼女が唐突に声を張る。
「ああ、いい匂いがする。ありがとう」
「一緒に食べましょう!」
「……ふ、そうだな」
その勢いに笑みが溢れた。
「……それから、お風呂の準備もできてます!」
「ん、ありがとう」
「……い、一緒に入る……?」
それにも礼を告げれば、さっきまでのキスの名残を残した濡れた唇がこちらの様子を伺いながら躊躇いがちに小さく付け加えるから、思わず目が瞬いだ。
「……入ってくれるの?」
だがすぐに頬が緩み、甘えるように鼻先をすり合わせてみる。
一旦は抑えた欲と熱が、再び顔を出す。
ちなみに、まだ一度も一緒に入ったことはない。
たまに誘ってみても、「恥ずかしいからやです……」と断られるのが常だった。
なのに。
「……並大抵の覚悟じゃ追いつかないって言ってたから……。だから、」
……あー、可愛くて堪らない。
彼女なりに一生懸命考えてくれた結果がそれなのだと思うと、愛おしすぎてもうすでに理性が焼き切れそうだ。
オレはその口をキスで塞いでから、葉菜を縦抱きにしてバスルームへ直行する。
「ちょ、え⁉︎志貴くん……っ、ご飯は⁉︎」
抱き上げられたことに驚いた葉菜は、とっさにオレの首に手を回してしがみついた。
「悪いけど、こっち食べるのが先」
「え、食べ……⁉︎」
そう。あなたの気が変わらないうちに。
だがそれは胸の内だけで付け加えておく。
それから脱衣所にそっと下ろして、後頭部に片手を差し込み深いキスを落とす。
オレの舌に応えようとする未だ辿々しいそれは愛くるしささえあるのに、角度を変えるたびに漏れる吐息混じりの甘い声は艶めかしく、否応なくオレを刺激する。
── 葉菜に塗り替えられたのは、性欲もだと思っている。
自分はそれに関しては淡白な方だと思っていたが、葉菜を前にすればご覧の通り、どの口が言う状態になってしまうのだから。
キスを続けながら自分の身につけているものをひとつひとつ剥いでいく。
彼女の部屋着であるジャージー素材のゆったりとしたワンピースもひと息に脱がす。
下着だけの姿になった葉菜は咄嗟に両手で胸を隠そうとするが、その手をやんわり止めて全てを剥ぎ取った。
「タ、タオルを……!」
「いらない」
慌ててタオルを求めて彷徨う手は、オレに阻まれそれを掴むことは叶わない。
だが、自分はちゃっかり洗面台の扉に隠していたゴムを手にする。こんな日のために忍ばせておいて正解だった。
そして生まれたままの状態になったオレたちは、唇を繋げたまま縺(もつ)れるように浴室へと雪崩れ込んだ。