敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
話の中で彼に教えてもらったのが、先ほどの『Qué tengas mucha suerte.』。
耳慣れないスペイン語が魔法の呪文のようで不思議と元気になれたし、彼と会えなくなってからも、何度も思い返しては独り言のように反芻した。
そして今でも、一番好きなスペイン語のフレーズだ。
「もしかして、美来か……?」
半信半疑な様子ながら、叶多くんがそう尋ねながら私を見る。
「はい! 覚えていてくれてよかった」
「もちろん覚えてるさ。でも、かなり変わったから驚いた」
彼は何度も目を瞬かせ、私の姿を上から下まで眺める。
「もしかして、老けたとか……?」
「違うよ。綺麗になったって意味だ」
心配そうにする私に噴き出し、サラッと褒め言葉を吐く叶多くん。
先ほどナンパ男と対峙していたときの緊迫した表情から一気にやわらかい雰囲気になり、胸がどきりと音を立てた。
彼の方こそ、あの頃よりずっとカッコいい大人の男性になっている。
「それはそうと、叶多くんはどうしてスペインに? 私と一緒で旅行?」
照れ隠しのように話題を変え、彼を見る。ネイビーのTシャツにチャコールグレーのテーパードパンツ、腕時計、レザーのスニーカーというシンプルなカジュアルファッションをしているので、仕事という感じではない。