敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
凛々しい眉が、わずかに中央に寄る。どうやら、私が誰なのか気づいていないらしい。
彼と会ったのは八年も前のことだから仕方がないけれど、ちょっぴり悔しい。
なんとか思い出してもらえないかな……。
「Qué tengas mucha suerte.」
考えた末に私が口にしたのは、『あなたにたくさんの幸運がありますように』という意味のスペイン語。
八年前、高校生だった私に叶多くんが教えてくれた言葉だ。
「ずっと昔、あなたが私にそう言ってくれたのよ」
四歳年上の彼と出会ったのは、当時のスペイン大使公邸で開かれたパーティーだ。
八束グループと城後都市開発が提携し、スペイン初の日系ホテルをオープンさせる計画が進行しており、私と叶多くんも両親と共にその場に参加していた。
日本語が通じて、かつ年の近い相手はほとんどいなかったため居心地の悪さを感じていた私に、叶多くんが気を遣って声をかけてくれたのだ。
当時大学生だった彼は社交的で話がうまく、私にも『敬語はいらないよ』とフランクに接してくれた。
彼とは父親が大企業の経営者であるという共通点もあり、色々としがらみのあるお互いの人生を嘆くとともに、励まし合ったりもした。