敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
彼だって、こんな風に名乗ることになるとは思わなかっただろう。しかしこうなってしまっては、身分も名前も隠しておけない。
「ご無沙汰しております、八束社長。城後叶多です」
清十郎さんにさんざん煽られた後でも、叶多くんは堂々と父に挨拶した。その姿が頼もしくて、私の心に消えかけていた希望の灯がともる。
叶多くんがこのまま日本にいるのか、それとも一時的に帰ってきただけなのかはわからない。
それでも、今この場を一緒に戦えるならこんなに心強いことはない。
「やはり、城後の……美来に近づいたのはなにが目的だ? 生憎だが、娘は会社のことはなにも知らんぞ!」
「落ち着いてください。私は城後都市開発の人間ではありません。欲しいものはただひとつ、美来さんだけです」
私の名を大切そうに呼ぶと同時に、叶多くんがこちらに手を差し伸べる。
さっき金縛りにあったように立ち上がれなかったのが嘘みたいに体が軽くなった私は、スッと立ち上がるとためらわずに彼の手を取り、寄り添って並んだ。