敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「お父さん、私は叶多くんと共に生きていきたいの。どうか許して」
「ならん! 彼の父親はとんだ裏切り者だ。ヤツのせいで、スペインにオープンさせる予定だった客室数一千二百の巨大ホテル計画が吹き飛んだ。死んでも許さん」
そう、八束と城後の因縁が生まれたのは、そのホテル計画だった。
まだ子どもだった私には詳しいことはわからないけれど、八年前両家が大使公邸のパーティーに招待されていたのは、スペインの観光業発展に、そのホテル事業が大きく貢献するだろうと思われていたからだ。
「しかし、そのことと私と美来さんとのことは関係ないでしょう。親同士の確執に、私たち子どもまで巻き込まないでいただきたい。……美来さんは私が連れて行きます」
いたって冷静に告げた叶多くんは、私の背中に手を添えて出入り口へと促す。
「憎い相手の息子に、かわいい娘を渡したいはずがないだろう……! 美来、彼の手を放しなさい!」
罵声に近い父の声が飛んできたけれど、私は振り向かずに結納会場を後にする。
襖の外では、一連のやり取りに聞き耳を立てていたであろうホテルスタッフが、真っ青な顔で立っていた。