敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
とくにここ数日は、来月行われる日本とスペインの友好イベントの準備に忙しくしていると聞いていたから、余計に重荷になりたくなくて……。
「なんだね、きみは⁉」
声を荒らげて立ち上がったのは、私の父だ。
叶多くんはつかつかと父の前まで進み出て、まっすぐ父を見つめる。
「私は――」
「八束社長、この男ですよ。スペインで美来さんを誘惑したのは」
叶多くんが自己紹介するより前に、清十郎さんの声が室内に響く。まるでこうなるタイミングを見計らっていたかのように流暢な口調が、異様に不気味だった。
「なんだって……?」
怪訝な顔で、叶多くんと清十郎さんとを見比べる父。その視線を受けて立ち上がった清十郎さんは、父たちの元へゆったりとした足取りで近づきながら続ける。
「この男の正体を知ったら、もっと驚かれますよ。なにせ、過去に美来さんへの接近を禁じたはずの、八束家の敵なんですから」
どうして、清十郎さんがそれを……。
「敵だと? では、まさか」
清十郎さんの奇妙な話術に導かれるようにして、父は叶多くんの正体を察したらしい。驚きと焦りが混じったような顔で、まじまじと叶多くんを見つめる。