敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「お騒がせしてすみません」
叶多くんがそれだけ言い残し、通路へ出て行く。歩き出した私たちを誰かが追いかけてくることもなかった。
政略結婚に背いた私は、親不孝者だろうか。それに自分の家族はともかく、清十郎さんのご両親に迷惑をかけてしまったという罪悪感がぬぐえない。
「あっ……」
考え事をしていたせいか、履き慣れない草履が通路の絨毯に引っかかり、よろめく。けれど、倒れ掛かる私の肩を叶多くんがしっかりと両手で支えてくれたので派手に転ぶことはなかった。
「ごめんなさい……」
「きみはひどく疲れた顔をしている。今日のことでずっと悩んでいたんだろう。間に合ってよかった」
美しい彼の双眸から、あたたかい日差しのような眼差しが降り注ぐ。
たくさんの人を振り回しが挙句悲しい思いをさせたという罪の意識で弱り切っていた心が、彼の優しさに癒やされていく。
大丈夫……彼だけは、なにがあっても私の味方だ。
「でも、どうして突然日本に? 結納のことは誰から聞いたの?」
「話す前に安全な場所へ移動しよう。とりあえず、タクシーへ」