敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 父たちが追ってくる様子はないが、安易に重要な話をしないのは、仕事で機密事項をを扱うことも珍しくない外交官としての癖みたいなものなのだろう。

 通路にはホテルのスタッフやほかの客たちもいて、誰が聞き耳を立てているかわからない。

 エントランスから外に出て、車寄せに待機していたタクシーに乗り込む。そしてこれから向かうらしいマンションの住所を運転手に告げると、叶多くんはようやく緊張が解けたように息をついた。

「あの許嫁……藤間を全面的に信用するのは危険な気がしていてね。時間の許す時で構わないから、紫陽花楼の若旦那についいての調べてくれと、日本にいる弟に頼んでいたんだ」
「弟さん……?」

 彼に弟がいると言うのは知っていた。八年前のパーティーの時は大学受験を控えていたために欠席で、実際に会ったことはないのだけれど。

「ああ。俺と違って城後都市開発での仕事を心から楽しんでいる、頼もしい弟だ。人懐っこい性格で初対面の相手の警戒心を解くのも得意だから、つい先日紫陽花楼に宿泊して、彼に近しい従業員にそれとなく話を聞いたそうだ。そこで、八束グループの令嬢と結納を交わすという情報を得た。俺も忙しい時ならスペインどころか大使館を出られない日もあるが、運よく休暇申請の許可が出たのはなにかの運命だったのかもな」

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