敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「ここは?」
「美来を匿っておく、秘密のアジトとでもいったところか」
「アジト……?」
物騒な響きに目を瞬かせていると、叶多くんは警戒するように周囲にぐるりと視線を巡らせた後、ぐっとと私の手を引く。
「誰が見ているかわからない。早く中へ」
「え、ええ」
コソコソしなければならないのは不本意だが、自動ドアから建物の中へ入る。入ってすぐの場所に設置されたパネルに叶多くんが暗証番号を打ち込むと、ふたつ目の自動ドアが開いて、広々としたエントランスホールに入ることができた。
磨き抜かれた白い大理石調の床に、壁は落ち着いたグレー。高い天井にシンプルでモダンなシャンデリアが輝く無機質な空間に、観葉植物の緑が唯一鮮やかだ。
叶多くんは入り口左手のコンシェルジュカウンターに立つコンシェルジュに目礼し、奥のエレベーターホールへと進む。
「ここは城後都市開発が管理する物件なんだ。本来は九月の俺の帰国に合わせて住めるよう手配していた部屋だが、美来の結納の情報を得ると同時に、弟に無理を言ってすぐに入居できるようにしてもらった。きみが実家にいづらくなるのを見越してね。だから、家具や家電もすべてそろっている」
「ありがとう……。そこまで先回りして考えてくれていたなんて」