敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「ごめんなさい」
「こんなときになにを言ってるんですか。私は美来様の味方です。お会いできてよかった」
「泉美さん……」
「立てますか? 私に掴まっていいですからね」
泉美さんに支えられ、なんとか立ち上がる。信頼している女性がそばにいるからなのか、ゆっくりではあるが歩き出すことができた。
泉美さんに内科クリニックを予約してあることを伝え、来た道を引き返していく。
「少しお痩せになったように見えますが、お食事はちゃんと取ってらっしゃいますか?」
「いいえ、ここ一週間くらい、スープや飲み物しか胃が受け付けないの」
「それじゃ、体力が持ちませんよね……」
「それに、なんだか嗅覚が敏感で……さっきもあの店から揚げ物の匂いがしただけで吐き気が」
先ほど行列だった飲食店を遠巻きに見て、呟く。店の前を通るときはギュッとハンカチで鼻を抑えるとともに、息を止めて通り過ぎた。
「あの、美来様」
不意に泉美さんが足を止めたので、私も自然と立ち止まる。彼女は言いにくそうに軽く唇を噛んだ後、意を決したように私を見た。