敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「月のものは、ちゃんと来てらっしゃいますか?」
「生理のこと? それなら確か……」

 言いかけて、はたと気づく。そういえば六月の半ばに生理が来て以降、七月は一度もなく、今月に入ってからもまだない。

 これってもしかして――。

「妊娠……?」

 可能性は大いにある。叶多くんの子なら授かりたいと自分で望んだんだもの。

 夏バテのような症状がやけに長引いているのも、悪阻だと考えれば辻褄が合う。

「だとしたら、内科では検査ができないかもしれません。キャンセルして、産婦人科の予約を取り直した方が」
「ええ……わかったわ」

 妊娠の可能性があるならなおのこと、年の近い女性である泉美さんがそばにいてくれて心強い。

 彼女のアドバイス通りに産婦人科に連絡し、待ち時間は多少あるものの検査をしてもらえることになった。

 少し距離があるのでタクシーを使うことにし、泉美さんとふたりで乗り込む。

 タクシー特有の香りでまた少し気分が悪くなったけれど、〝叶多くんとの赤ちゃんがお腹にいるかも〟と思うと、なんとか気丈にしていられた。

< 124 / 220 >

この作品をシェア

pagetop