敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「今、八週目ですね。赤ちゃんの心臓もとても元気に動いていますよ」
「八週……」

 初めて訪れた産婦人科の診察室で、手の中にある白黒のエコー写真を見る。その中にぽっかり空いた丸い部屋に、おぼろげにではあるが、人の形をしたような白いものが見える。

 これが赤ちゃん……? なんて小さいんだろう。

「予定日は三月下旬頃になりそうですが、次回の健診で決定しましょう。母子手帳と、公費で健診を受けられる受診票を、お住まいの区役所でもらってくださいね」
「はい……」

 喜びと感動が大きすぎて、事務的な話は上の空で流してしまった。居住地は今いるマンションと考えていいのかそれとも実家なのか、あとでネットで調べなくては。

 診察室を出ると、待合室のベンチでソワソワと結果を待っていた泉美さんにも、妊娠を報告した。

「おめでとうございます。でも、おひとりで大丈夫ですか……?」

 泉美さんも微笑んで祝福しつつも、半分は不安そうだ。

 病院に着くまでの間に現在の暮らしについて説明してあったため、妊娠の件で余計に心配をかけてしまったのだろう。

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