敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「いいえ、さすがにそれはないわ。先月のスペイン旅行でできた子だと思う」

 泉美さんはホッとしたように目を閉じ、小さく微笑む。

「そうですか……。すみません、変なことを聞いてしまって」
「泉美さんの気持ちはわかってるわ。色々心配かけてごめんなさい。それと最後にお願いがあるんだけど、今日私と会ったことを父や清十郎さんには――」
「もちろん、口外しません。どうかお体に気をつけて、元気な子を産んでくださいね」
「ありがとう。今日、泉美さんに会えてよかった」

 別れのあいさつを交わしていると、手配していたタクシーがやってくる。

 私はそれに乗って叶多くんのマンションへ、泉美さんは徒歩で八束家へと、それぞれの帰路についた。

 叶多くんの帰国まではあと半月弱。すぐに妊娠を伝えたい気持ちもあるけれど、過保護な彼が私の体調を心配するのは目に見えている。

 大使館での仕事に支障が出ても申し訳ないし、なにより喜ぶ彼の顔が間近で見たいのもあり、帰ってきてから伝えて驚かせることに決めた。

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