敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「紫陽花楼は、確かに昔ながらの旅館だけど……偶然なのかな」
《それは俺にもわからない。純粋なゲストとして来るのか、それとも俺に文句を言いに来るのか》
「さすがに、暴力をふるったりはしないと思うけれど……彼には不気味な所も多いから、気をつけてね」
《わかってる。隙は見せないさ》
頼もしい声を聞き、安堵する。清十郎さんがなにか仕掛けてきたとしても、叶多くんならうまく立ち回るだろう。
《ところで美来、体調は?》
「あ、うん。前よりはよくなったから、心配しないで」
悪阻の症状は続いているが、原因がわかっただけでも以前より気が楽だ。
《前よりは、ということはまだ本調子じゃない?》
「大丈夫。それより、叶多くんに会えない寂しさの方がつらいかも」
あと一週間。ようやく再会の日が近づいていることもあり、軽く弱音を吐く。
《俺も同じだよ、美来》
「私のこと、考える?」
《あたり前だろ。スペインでは短いはずの夜が長く感じるし、空を見上げることが増えた。美来は今なにをしているんだろうって考えながら》