敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「でも、私たちももう大人だもの。干渉される筋合いはないわ」
「同感だ。じゃ、行こう。お気に入りの店に連れて行く」
「ありがとう。叶多くんのお気に入りならきっと素敵なお店ね」
「じゃ、決まりだ。それ、重そうだな。貸して」
私が引いていたキャリーバッグに気づいた彼が、流れるような動作で自分の方へ引き寄せ、代わりに引いてくれる。紳士的な気遣いはさすがだ。
「ありがとう」
歩き出す彼の横顔を見上げ、微笑む。
「どういたしまして。ところで美来はいつまでマドリードにいるんだ?」
「それが……わからないの」
「わからない?」
「日本に帰ったら好きでもない相手と結婚させられるの。それが嫌で、スペインに逃げてきたのよ」
つとめて明るく話したものの、やはり政略結婚のことを考えると憂鬱になった。
周囲に目を向けると、人々が憩う広場には芸術的な彫像が立ち並び、広場を取り囲む歴史的建造物の数々も、異国情緒たっぷりだ。
しかし、今の私は父と清十郎さんによって魂の一部を日本に縛り付けられているような状態なので、完全には解放的になれない。