敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「……へえ」
叶多くんは感情の読めない声で相槌を打ったきり黙り込む。過去の知り合いとはいえ、いきなりヘビーな話題を出されて困っているのだろう。
空気を変えたくて、話題を探す。
「ねえ、これから行くのはどんなお店?」
「窓からマドリードの街が一望できて、うまいコーヒーを淹れてくれる」
「甘いものはある?」
「ケーキも焼き菓子もあるよ。そういえばあの時のパーティーでも、美来は皿にデザートばかり盛りつけていたな」
叶多くんの悪戯っぽい瞳が、からかうように私を見下ろす。
「そういうことは忘れてよ」
「どうして。よく食べる女性は好きだよ」
『好き』だなんて言葉が彼の口から飛び出したので、ドキッとする。
社交辞令に違いないのについ過剰に反応してしまうのは、将来清十郎さんの元へ嫁ぐため、父に男女交際を禁じられていたせいだ。
といっても、取り立てて美人でもなく、暇さえあれば本ばかり読んでいた私は男の人から好意を寄せられたことなんてないので、交際を禁じられるまでもなかったけれど……。
そんなことを思っていると、バッグにしまったスマホが短く振動したことに気づく。
また父かな……。