敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
悪阻もピークは過ぎたようだけれど、タクシーの匂いは未だに苦手。外出禁止令も今日で解除になることだし、羽田空港までは電車で行くことにした。
マンションを出て、最寄りの駅から地下鉄に乗るために歩き出す。
この辺りは少し歩いただけで駅にたどり着けるので助かる。
二十メートル先にもう駅の入り口が見えて、少し足を速めたその時だった。
「美来」
道路の方からよく知る男性の声に呼ばれた気がして、立ち止まる。
今の声……まさか、そんな。
おそるおそる視線を向けた路肩には、一台のタクシーが止まっている。後部座席のドアからゆったりとした動作で降りてきたのは、和服姿の清十郎さんだった。
逃げ出したいのに、足がすくんで動かない。
「どうして、ここが……?」
一歩一歩近づいてくる彼にからからの喉でそれだけ尋ねると、清十郎さんは切れ長の目を細めて微笑む。それから私の耳のそばに顔を近づけた。
「お前のことはなんでも知っている。未来の夫だからな」
「嘘です……そんな魔法使いみたいな真似ができるわけない」
「だったらなんだ。どちらにしろ鬼ごっこは終わりだ。……来い」