敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 * * *

「美来……」

 最愛の女性の名を呟く自分の声で、ぼんやり目が覚めた。瞬きを繰り返しつつ、テーブルに突っ伏していた上半身を起こす。

 すると、正面で頬杖を突きニンマリ微笑んでいる同僚と目が合った。

「おはよう、カナタ」

 流暢に日本語を使いこなす彼は、スッキリ額を出した短髪と立派な顎ひげ、愛嬌のある垂れ目がトレードマーク、俺と同い年の現地採用職員、ホルヘだ。

 大使館で日系企業の支援業務に従事する俺と、窓口で接客業務をしているホルヘとは業務上のかかわりはない。

 しかし、親切で世話焼きな彼は、時たまこうして自宅に俺を呼んで酒や料理を振舞ってくれる。

 酒好きの彼が手作りしたという自家製のリキュールは爽やかなオレンジの香りがして、口当たりがよいのでついつい深酒してしまったらしい。

 思わず腕時計を見ると、午後十時半を過ぎたところ。八時頃から飲み始めてうたた寝していたのはほんの十分程度だが、せっかく招いてくれたホルヘに申し訳ない。

「寝てたか……悪い」
「気にしないで。明日のパーティーの準備に追われて、あまり寝てなかったんだろ?」
「ああ。おかげで準備は滞りなく進んでる」

 ホルヘが差し出してくれたグラスの水でのどを潤し、そう答えた。パーティーの準備自体は、なにも問題ない。
 
 しかし、招待客リストの中に藤間清十郎の名を見つけてから、胸騒ぎがしている。

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