敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「ホルヘに借りた本があっただろ? まだ途中までしか読んでいないが、彼女にはあのヒロインのように親の決めた縁談があるし、俺は彼女の親から疎まれているんだ」
「テルエルの恋人たち? カナタもそうだったのか……意外とありふれた話なのかもね、結婚に親が絡んでくるっていうのは」
実は、ホルヘもつい最近まで恋人との結婚を親に反対されていた。
俺たちと事情は違い、彼の場合は相手が同性だからである。彼は両性愛者なのだ。
スペインでは同性婚が可能だが、信仰する宗教や個人の考え方次第で、中には受け入れられない人もいる。
それでもホルヘはあきらめずに辛抱強く対話を重ね、互いの両親に先月結婚を認めてもらったところだ。
その話を聞いた直後、大使館職員の中でも親しい仲間内で昼食会を開き、幸せ真っただ中のホルヘを冷やかしながら祝った。
「だけど、彼女は物語の結末を知った上で、俺にこう言った。『私は、この恋を悲劇にするつもりなんてないわ』って。俺はその覚悟に全力で応えたい」
あのときの美来のまっすぐな眼差しは、今でも胸に焼きついている。
強く気高い精神を持つ彼女が、いっそう愛おしく感じられた瞬間でもあった。