敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
目線の先にあるステージでは素早く畳が片付けられ、間もなくフラメンコの演技が始まった。
力強く鳴り響くギターの音色に乗せた情熱的なダンスは、端から見たら談笑しているように見えるであろう俺と藤間の、内なる怒りを表現しているかのよう。
「あなたになにをされるかわかりませんから、教えるはずがありません」
「海外で彼女をそそのかし、体まで奪った張本人がなにを言いますか」
藤間は切れ長の目を細め、クスクスと俺をあざ笑う。
どうやら、このまま彼と話していても無駄な言い合いが続くだけのようだ。
そのときちょうど、一曲目のフラメンコの演奏が終わる。
俺は小さく息を吐くと、藤間にまっすぐ視線を向けた。
「ええ、そうですね。美来のことは、体も心もすべて俺が奪いました。もちろん、今後もお返しするつもりはありません。……仕事がありますので、失礼します」
藤間の返事を待たず、彼のもとを離れて会場の出入り口へ向かう。
すると背後で藤間がこれみよがしに深いため息をついたので、眉根を寄せて振り返る。