敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~


 * * *


「……叶多くん」
「うん?」

 八年前のことを思い返しているうちに、おぼろげながらも、心に大切なものを取り戻したような感覚を抱いて口を開く。

 しかし、頬を摘まれた今の状態ではどうやっても格好がつかないので、私は軽く彼を睨んだ。

「この手、もう放して」
「元気な美来が戻ってきたみたいだな」

 穏やかに笑ってそう言った彼は、頬から放した手で今度は私の手を握る。

 そのまま歩き出そうとするので、「えっ?」と思わず声が出た。

「ちょっと、叶多くん……」
「ちゃんと握ってて。迷子になった隙に日本から迎えに来た婚約者にさらわれたら大変だ」
「そんな、今すぐには来ないわ。日本時間で明日の朝イチに発つって言ってたから、こっちに着くのは明日の午後じゃないかしら」

 困惑しつつも、叶多くんと手を繋ぐのは嫌じゃなかった。

 温かくて大きな彼の手が、私を正しい方向へ導いてくれる気がしたから。

「そこ、段差あるから気をつけて」
「えっ? そこって……? きゃっ!」

 叶多くんの大股について行けず、気づいた時には小さな段差につまずいて前につんのめる。

 けれど、倒れた込んだ先は地面でなく、叶多くんの広い胸。

 目の前のTシャツからふわりと漂う大人っぽい香水の香りに、胸がドキドキと暴れた。

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