敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「……ごめん、歩くのが早かったな」
そっと私の体を離し、叶多くんが苦笑する。絶対に顔が赤いから見られたくなくて、私は下を向いたまま「ううん、平気」と呟いた。
叶多くんはそれ以上何も言わなかったけれど、もう一度私の手を優しく手を取って、今度はゆっくり足を進めてくれる。
日本を離れ、久しぶりに再会した男性と手を繋いでマドリードの景色の中を歩いている。そんな自分がなんだか物語の住人にでもなったようで、胸の高鳴りはしばらくやみそうになかった。
彼の案内でやってきたのは、マドリード中心部にある老舗のカフェ。
五階建てビルの三階に位置し、叶多くんが話していたように、窓からマドリードの街並みが見下ろせる。
かわいらしい白木の丸テーブルに、お揃いの椅子が二脚向かい合わせに置かれた窓際の席に着くと、白いシャツに黒いカフェエプロンを着けたウエイターが注文を取りに来てくれる。
叶多くんと相談し、濃いエスプレッソにホットミルクを注いだ『カフェ・コン・レチェ』をふたり分と、甘いものが食べたかった私は焼き立てのシナモンロールを注文した。