敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「よかったな、美来。ご両親に認めてもらえて」
「うん。叶多くんのおかげ」
「幸せになろうな、三人で」

 にぎやかな食卓でひっそりふたりの会話をしていると、ほろよいの隆多さんに「そこ、いちゃいちゃしない」と突っ込まれ、叶多くんと一緒に照れながら笑う。

 今日は私と叶多くんが未来への一歩を踏み出した、大切な日。

 ずっと夢見ていた幸せが実現したようなこの光景を、この先も絶対に忘れないよう記憶に刻んだ。


 私と叶多くんは九月の終わりに婚姻届を提出し、晴れて正式な夫婦になった。

 住まいは今まで〝アジト〟だったあのマンション。万全のセキュリティやコンシェルジュサービスは、多忙な夫を持つ妊婦の私にはとてもありがたく、新生活はとても快適だ。

 安定期を迎えた翌月にはお腹もふっくらとしてきて、土曜日の妊婦健診に初めて叶多くんも同行した。

「城後美来さん」

 待合室でそう呼ばれることにささやかな幸せを感じつつ、ふたりで診察室に入る。

 腹部エコーをリアルタイムで初めて目の当たりにした彼は、食い入るようにモニターの画像に見入った。

 今回はたまたま頭の形や横顔がハッキリ見えたので、感動しているようだ。

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