敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「すごい……人間だ」
「あたり前じゃない」
「なぁ、どっちに似てると思う?」
「さすがに白黒の2Dエコーじゃわからないよ」
叶多くんらしからぬテンションの高さに、思わず笑いがこぼれる。私たちの会話を聞いて、女性の主治医も終始ニコニコしていた。
悪阻の症状はすっかりなくなり、今度は逆にお腹が空くようになってしまったので、体重管理に注意するよう指導され、診察終了。次回はまた四週間後だ。
会計を終えて産院を出るとき、意外な人物と鉢合わせた。
「……泉美さん?」
「美来様……」
肩の上で揺れる綺麗なボブヘアは健在で、顔色や表情も明るい。きっと、清十郎さんとうまくいっているのだ。
それにしても彼女が八束家を辞める時、これからは〝美来さん〟でいいと言ったのに、まだ家政婦だった時の癖が抜けないらしい。
「これからは〝美来〟でいいって言ったじゃない」
「そうでしたね。でもさすがに呼び捨ては……美来さん、で」
「ええ、それでお願い。それにしてもこんなところで会うなんて。どこか具合が悪いの?」